
社内で「不正があるかもしれない」という疑いが上がったとき、問題になるのは “不正の有無の確証がない” ことです。
噂や違和感だけで不正の対策に動けば、職場の空気が悪くなりますし、特定の社員を根拠なく不正の犯人だと決めつければ労務トラブルに発展しかねません。
そこで必要になるのが「社内不正調査」です。
この記事では、社内不正調査とは何か、どんな方法で調べるのかから、調査費用の考え方まで解説していきます。
まずは社内不正調査とはどういったものか、から見ていきましょう。
社内不正調査とは?
社内不正調査とは、社内で起きた(または起きている可能性がある)不正について、事実関係を整理し、その後の対応について判断できる材料を揃えるための調査です。
ここで重要なのは、調査の目的が「犯人探し」ではないことです。
会社としては、次のような情報を入手し、最終的な対応を判断できる状態にするのがゴールになります。
- 不正の有無を確認する
- 被害の範囲を把握する
- 再発防止に必要な原因を特定する
- 懲戒・配置転換・取引先対応などの判断材料にする
事件性がある場合は警察へ、対応の判断材料は民間調査が役立つこともある
社内不正には、大きく分けて2つの側面があります。
- 刑事事件として扱える可能性がある不正(横領、背任、詐欺、恐喝など)
- 会社の内部問題として扱う不正(規程違反、勤怠不正、情報持ち出しの疑い、競業、ハラスメント等)
- ※ハラスメントは内容によって刑事事件になる可能性もある
事件性が強い場合は警察が関わることもありますが、現実には
「まず社内で事実を整理しないと動けない」というケースも多いです。
つまり、会社側は “何が起きているのか” を把握しなければ、警察へ預けるべきか、社内で対処が可能かの判断も難しいのです。
内部監査・人事調査との違い
社内不正は、まず社内で確認できること(勤怠、経費、発注、権限、ログ、稟議など)から調査するのが基本です。
ただ、社内だけの調査には限界もあります。
- 関係者が身内なので、聞き取りがなあなあになる
- すでに警戒されて証拠が出にくい
- 社外の人間へ接触や受け渡しなどがあると、社内データだけでは追いにくい
- 「公平性」を求められ、社内調査だと利害関係などから疑念が残る
こういうときに、
外部の専門家(弁護士、デジタル・フォレンジック業者、探偵など)による調査を頼る選択肢が出てきます。
社内不正のよくある種類
社内不正調査の対象となる事柄には、次のようなものがあります。
- 横領・キックバック(バックマージン)
- 経費不正・水増し請求
- 勤怠不正(虚偽の外回り、サボり、なりすまし打刻など)
- 情報漏えい・営業秘密の持ち出し
- 競業・不適切な副業(利益相反)
- ハラスメント、脅迫、つきまとい等(被害者保護が前提)
不正の種類によって、調査手法も、必要な証拠の形も変わってきます。
社内不正はどうやって調べる?社内不正調査の方法とは
次に、社内不正調査で実際に使われる方法を確認しておきましょう。
社内資料・数字の突合(勤怠・経費・発注・権限)
まずやるべきは「社内で調べられる証拠」を押さえることです。
- 勤怠と業務実態のズレ
- 経費のパターン(曜日・店・金額・同一店の繰り返し等)
- 発注先の偏り、例外処理の増加
- 権限の集中、承認ルートの形骸化
これらを確かめるだけでも、根拠のない疑いがある程度確かなものになります。
関係者へのヒアリング(聞き取り)
不正は、データだけでは全体像が見えないことがあります。
そのため、関係部署・関係者への聞き取りが行われます。
ただし、聞き取りはやり方を誤ると、
- 口裏合わせが始まる
- 証拠が消される
- 被害者が萎縮する
といったことも起きます。
順番と範囲を決め、必要最小限で進めるのがポイントです。
デジタル調査(PC・メール・ログなど)
情報持ち出し、経費不正、裏取引などは、デジタル痕跡が鍵になることがあります。
ただし、データの扱いは社内規程や法的リスクも絡むので、慎重な調査が必要です。
また、デジタルデバイス上の証拠をきちんと保全するには、専門性の高い技術が必要です。うかつにデバイスに手を入れると、それが痕跡を上書きしてしまい、公的な場での証拠能力をなくしてしまう可能性があります。
そうしたリスクを下げるために、デジタル・フォレンジックという調査技術を持った業者へ依頼することも検討したほうがいいかもしれません。これはどこの調査業者でも持っているという技術ではないため、業者選びの選択肢を絞るものとなるでしょう。
「社内でどこまで確認できるか」「外部の専門家に任せるべきか」を分けて考えるとスムーズです。
行動調査(張り込み・尾行など)で“社外の実態”を確認する
社内データだけでは追いにくいのが、社外で起きる行動です。
- 外回りのはずの時間に何をしているのか
- 取引先・競合・関係者と実際に接触しているのか
- 受け渡しや会合など“現場で起きる事実”があるのか
こういった部分は、
民間調査(探偵等)が関わることがあります。
ポイントは「やっているに違いない」を証明するのではなく、事実を時系列で押さえて整理することです。
社内不正調査の流れ
社内不正調査は、だいたい次の流れで進みます。
1. 目的の確認(懲戒/損害回収/再発防止/被害者保護 など)
2. 現状整理(事実と推測を分ける)
3. 調査計画(範囲・順番・期間・扱う情報)
4. 調査実施(社内確認/ヒアリング/デジタル/行動確認 等)
5. 報告書化(判断材料として整理)
6. 次の一手(処分・取引先対応・警察相談・再発防止策)
最初に「目的」が決まっていないと、途中で調査が迷走しがちです。
社内不正調査にかかる費用とは?
最後に、社内不正調査の費用の考え方を確認しましょう。
社内不正調査の費用は、内容によって幅があります。
なぜ幅が出るかというと、
- 不正の種類(データ中心か、行動中心か)
- 対象人数と期間
- 必要な体制(調査員の人数、専門家の有無)
- 調査の難易度(警戒度、範囲の広さ)
で工数が大きく変わるからです。
よくある料金プラン
民間調査(探偵等)を含む場合、よくあるのは次のような考え方です。
- 時間制(稼働時間×単価)
- パック型(一定時間・一定日数のセット)
- 成功報酬型(条件達成で追加費用)
- 完全成功報酬型(条件達成時のみ発生) ※ただし条件と金額は高めになりがち
社内不正は「何をもって成功とするか」がケースによって違います。
費用だけでなく、成果物(報告書)の内容と、成功条件の定義を必ず確認した方がいいでしょう。
調査が空振りでも費用がかかることが多い
社内不正調査は「実施した工数」にコストがかかるため、
不正が見つからなかった場合でも費用が発生することが一般的です。
ただし「不正がなかった」という結論が、会社にとって価値になるケースもあります。
疑いを抱えたまま職場に残すより、早めに白黒(またはグレーの範囲)を整理できるのは大きいからです。<
費用を抑えたいなら、最初に情報整理をしっかりやろう
調査費用を抑えるコツはシンプルです。
会社が持っている情報を、最初に整理して渡すことです。
- いつから、どんな兆候があるか
- どの部署・誰が関係していそうか
- 勤務形態(外回りの有無、裁量の範囲)
- 稟議・発注・経費・情報管理のルール
- すでに確認済みの資料(勤怠、経費、発注、権限 等)
情報が揃っているほど、
調査のムダが減り、結果的に費用も抑えやすくなります。
まとめ:社内不正調査は「疑い」を「判断材料」に変えるために行う
社内不正調査は、不正を断罪するためだけのものではありません。
会社が次の行動(処分、是正、再発防止、警察相談など)を取るために、事実を整理して判断できる状態にするためのものです。
社内でできる確認を進めたうえで、必要があれば外部の専門家も使い、
できるだけ短い時間で、リスクの少ない形に着地させる。
それが、社内不正対応をこじらせない一番のコツです。